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ぷーちん君のクリムゾン日記  - 華麗なるロシア特殊製鋼の一族 - 

ロシア特殊製鋼に高炉を建てる事ができなかったオレは、最早ただの負け犬に過ぎず、そして負け犬に情けをかける人間など、この過酷なロシアを生きる民の中には一人もいない。
父との争いに敗れたあの日以来、気分が高揚する日がしばらく続いては、やがて何もかもやる気を失くして無気力になる生活が続いている。
これはいけない。自分でもわかっているけど、どうにもならないから辛い。ロシア医学大全によると、どうやらこれは躁鬱とよばれる症状みたいで、今のところはっきりとした治療法はないらしい。それを知り、オレの絶望は更に一層深まった。
こんなことなら知らねば良かった。知らないままでいるほうが、希望を失わずに済むこともある。そして知らないでいることそのものが救いに成り得る場合もあると、オレは学んだ。
ああ神よ、ただ生きていることが、どうしてこれほど辛いのですか…

家に篭っていては尚更気分が沈むから、オレはその日外に出ていた。辺り一面ダイヤモンドダストが舞ってはいるが、その美しさもオレの凍った心に届かなかった。なんてことだ、一体何故こうなったのか、今のオレの心はロシアの凍土にも負けないくらいに冷たく、厚い氷に覆われてしまっているのだ。但しこんなオレにも未だ涙は残っていたのか、頬を伝う涙の滴は暖かだった。
オレは再び、皆と笑いあいながらウォッカを酌み交わすことができるのだろうか。
オレは再び、ロシアの大地に沈む夕日を、その日を幸福に過ごした男の眼で見守ることができるのだろうか。
今はただ、身を切るロシアの風がオレの血と肉を冷たくさせるばっかりだ…。


「貴方もただの腑抜けですわね。貴方のご友人も今に貴方からお離れになるんじゃなくって?
 だいたい貴方、万表家の実印もどこにあるかご存知ありませんのじゃございませんこと? 貴方のような負け犬は、万表家の閨閥には最早必要ありません。」

くそ、高須 愛子の幻影よ、未だオレをあざ笑うのか。奴がオレの目の前に現れたその日から、奴はオレの呪いとなった。ああ、もうオレを一人にしてくれないか。もうそっと、雪に埋もれさせてくれ…

「大統領」 オレを呼ぶ声が聞こえる。振り返ればヤナーエフが立っていた。
今一番顔を合わせたくないのがこいつだ、ヤナーエフ。相変わらず鬱陶しい顔してやがる。用件だけ言ってさっさとあっちにいってくれ。「なんだよ」 苛立ちを堪えてオレは言う。
「お電話です」
誰からだよ要領悪いな、お前それでもロシア副大統領か。イラっとしたけど、もう話す気力も失せてきたのでオレは黙ってヤナーエフが差し出す携帯電話をひったくるようにして奪い取った。瞬間ヤナーエフが軽く舌打したように見えたがざまーみろ、知ったことかよ。何やらぶつくさぼやきながらヤナーエフはさっさとどこかに行ってくれた。気が利くじゃないか、その調子でもうこの先ニ週間はオレの前から消えていてくれたらありがたいがな。
それにしてもオレに電話とはいったい誰だ。もしや高須 愛子じゃあるまいな、いや幾らなんでもそれはないか、いや待て、ヤナーエフがなんかオレに意地悪でもして高須 愛子と繋いだのかも。まあとにかくオレはひとまず電話に出た。 「もしもし、ぷーちんです。」

「狩にいきませんか、ぷーちん君」

「… ギバちゃん?」

電話越しの友の声に、長く心に降り積もっていた雪が溶けた気がした。
見ろ、ダイヤモンドダストは未だその輝きを失うことなく、ロシアの空に輝いているぞ…

(続く)


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[ 2007/03/19 ] クリムゾン | tb(0) | cm(0)
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