世間があくまでオレに冷たいことが理解できない。どうしてみんなオレに優しくできないのかと、毎日オレは、奥歯で悔しい思いを噛み潰す。イヤなこともオレにだけ毎日降りかかるから正直まいる。
帰りの電車で一日を振り返り、その日起こった全ての事に理由を当て込み、色々検証してみたところでオレに落ち度があったことなど、今までただの一度もなかった。
非がある所は必ず同期のあいつであったり、上司の誰かであったりするのでオレは歯痒い。
目に余るほど世がオレに対して理不尽なので、やり場のない怒りに内心オレの心は毎日煮えたぎってはいるものの、怒りは何も産み出さないのを十分心得ているオレは、怒りを憂いに転換するべく静かに目を閉じ、世間の悪意をこのか細い両手で全て受け止め、罪深き盲しいた彼らの罪を許す。罪を憎む事があっても、人を憎んだら駄目だってオレのパパが。そうしてオレは慈悲の心で己を癒し、安心を得る。我が家では先祖代々そうして人を許してきたのだ。
オレはそんな心の広き一族に生まれたことが誇らしい。父母、祖父母らに感謝の日々だ。そうしてオレはご先祖さまの加護を得るのだ。
電車で大方の罪を全て許し、やがて安息の我が家に辿り着いたらジャージに着替えて座椅子に腰掛け、仮眠を取る。そうして30分ほど寝てから起きたら必ず腹が減っているので御飯を食う。んでだね、その後ゴロゴロしつつ、時々なんやかんやとだらだらしてたらほとんど夜も終わり近くになっているので、ちょっと無理して布団から起き、他にもなんやかんやと怠けた事を幾つかしてから歯を磨いて、オレは寝る。で、起きたら朝になっているので眠いったらない。
目覚めの直後、今日も働きに出ねばならない事を思い出してはついつい舌打ちするのが朝の日課だ。こうしてオレの一日が始まる。
まあ概ね目覚めた時点でその日の内の6割近くはオレの中では殆ど終わっているも同然なので、あとはいかに地味に、そして穏便に日中過ごすかにかかっているのだ。屋外で、無駄にエネルギーを使ってはいけない。これは長年大阪砂漠の喧騒を一身に身に受けてきた末に、オレが纏った自衛の為の衣であるのだ。
一見するとだらけていそうなオレだけど、いざ何か事に挑めばオレは立派にやってのける素質があるので、普段はゆとりを持って暮らしていても問題ない。一切ないのだ。最も肝心な魂の部分でオレは全ての事柄を踏まえ、それに立ち向かうべき覚悟を持って生きているのだ。
その内やるよ、オレは何かを。
いつかでっかい何かを成し遂げるよオレ。
…
世間がちっともオレを理解してくれないまま、オレは今年で29になる。
明日からは頑張ろうと、今すごく思った。